9 12月 2010
今更ながらかも知れないが、「夢をかなえるゾウ」をつい最近読了した。DVDを見た時から気になっていたのだが。
読んでみると面白い。私よりも年下の作家さんがこんな作品を世に送り出して、ベストセラーになった。非常に励まされる話である。
近い将来、今書きためているものを集めて自己啓発本にも挑戦してみたい。うぃる爺になるのかなぁ(笑)
私自身が大阪人なので、余計に関西弁がしっくりくるという部分がある。しかし、この関西弁というのは何とも不思議な影響力があるような気がする、きっとこれは関西人以外の人にも同じなのだろう。
ということで今日のガネーシャ(タエーシャではない 笑)の言葉
「みんな知ってんねん。やりたいことやって後悔せんような人生送ったほうが幸せになれるてな。でもやらへんねん。何でや?それは、今の自分と同じこと考えてるからや。収入。世間体。不安。同じやで。人をしばってる鎖なんてみんな同じなんや」
そしてガネーシャは言った。「今まで無理やったら、これからも無理や。変えるならそれは『今』や。『今』何か一歩踏み出さんと。自分それ、やらんまましんでくで」
まさに意力の重要性である。今を変えるのに必要なのは、考えることではなく、行動することだ。
「ここがロドスだ、ここで飛べ」という言葉もある。じゃ、飛んでみよう!
20 5月 2010
日本出張中にたまたま開催されていた、とある電子出版に関するセミナーに参加した時のことである。
後ろの方に座って、途中から明らかに退屈な展開を迎えていたプレゼンやディスカッションを、あくびを堪えながら聴いていた僕の視線に妙な人物が飛び込んできた。
かすりの着物を着てメガネをかけているその老人は、明らかにその場に不釣合いだったが、最も不釣合いだったのはその鋭い眼光だった。彼も明らかに退屈しているようだったが、どちらかというとそれを通り越して腹を立てているようだった。
壇上のパネリストの中には、したり顔のジャーナリストと電子出版ブームに何とかついていこうとして必死な中堅出版社の編集者、そして日本では有名なウェブサービスを展開している某氏の姿があった。この時はまだiPadは世にはでていなかったが、スティーブ・ジョブズの「新創造物」プレゼンがすでに世界を震撼させた後であり、巷には賛否両論が巻き起こっていた。このイベントもそういう時代の波を反映して新興の電子出版社社長の呼びかけで開催されたものだった。だがアメリカで電子出版については実業も含めてそれなりの経験と見識をもっていることを自認する僕にとっては、言葉は悪いが、まったく根拠があるとは思えないようなものばかりだった。大体誰もまだ実機を触っていないし、キンドルストアでの出版経験もないのによくそこまで言い切れるな、というコメントが多かった。きっとiPhoneの最初の時もこうだったのだろう。読み違いをしないようにとそれなりに配慮してコメントしているのだが、それがかえっておかしかった。例えばこんな感じだった。
iPadのキーボードはiPhoneより大きいから打ちやすい、とジャーナリストが言った。
これは明らかに間違いだ。実際にはiPadのキーボードは微妙に本物に近いので、逆に打ちにくいだろう。しかも横において打つとキーボードと手が画面を隠してしまうので打ちにくいこと此の上ない。指で打てるiPhoneのほうがまだましだった。しかも間違えて打っても何の反応もないため、そのまま打ち続けてしまう。タイピング歴20年以上の僕でも正直音を上げるほどだ。きっとBlueToothのキーボードを使うしかないだろう。
出版関係者は面目を保ちたい一心で「アメリカでは元々本の値段が高いから電子が流行るが日本ではそもそも安いから影響を受けにくい」と言った。
それも明らかに間違いだ。消費者は誰だって安いのに越したことはないと思っている。ピリオドだ。大体再販制度の無いアメリカには本の定価自体がなくすぐにディスカウントされていくことをこの人は知らないのだろうか。最終的に値段を決めるのは消費者である。それが電子出版革命の肝の一つではないか。
そして、僕をもっとも困惑させたのがウェブサービスを提供している某氏だった。名前が売れているのをいいことに、彼はこんなことを言ってのけたのだ。
「iPadはタダの大きなiPodだから何も画期的ではない。僕はぜんぜん興味ないですね」
好き嫌いは個人の自由だから構わない、しかしここは公の場である。その人物の世論への影響力を考えた時に、それにはあまりにも相応しくないのではないか。他に言うことはないのか、と僕は少し気分が悪くなった。あまりにも的を射ていない発言だった。
これは何としても質疑応答のセッションで発言をしよう、と思って準備していると、誰よりも早く真っ先に手を上げたのはその老人だった。彼の目はどちらかというと怒りに震えているように見えた。司会者も戸惑いながらも、一本しか挙がっていない堂々とした手を無視することもできず、彼にマイクを手渡した。
こんな老人が何を言うのだろうか、と思ったら彼は開口一番こう言ってその場にいた者の度肝を抜いたのである。
「iPadが大きいiPhoneやいうのはアホでも言えるコメントやが、まったく意味がない。あんたはまだ触ったことないんやろ?大体それを言うなら。。。」そう言って、少し咳払いをしながら老人は一気に畳みかけたのだった
「タクシーとバスもサイズ違うだけやが、バスのことを大きなタクシーやから意味ない、ていうんか!?周りが混乱するから分からんもんは黙っとれ!ダァホ!」
大音量の叫び声が会場にこだましたかと思うと、いつのまにか正面のスクリーンには大きなタクシーとバスの絵が両側に写っており、二つの絵は見慣れた数式記号で結ばれていた。どうやら「バスは大きなタクシーではない」と言いたいようだ。(ちなみにダァホという音は、関西弁で言うところのどアホである。漫才などでも見られるが、関西弁でいうところの「アホ」という言葉はかならずしもけなすばかりのコトバではなく、関西人にとっては愛着すら感じられる)
パネリストを含め、会場のみんなが呆気に取られる中、この老人は何者だろうと視線を戻したらその席には彼の姿はもう無かった。そして、いつのまにか僕の席の机の上に一冊の本が置いてあった。それには「iPad VS キンドル」と書いてあった。これが僕とうぃる爺の最初の出会いだった。それから僕は彼のことをずっと追いかけることになる。。。
(注:この物語はフィクションです)
19 5月 2010
今回初めてiPadを持参して東京に出張したわけだが、やはり実体験は本当に重要だと思う。
巷の電子出版に関する論争や書籍を見ていて思うのだが、私が首をかしげるような意見がでてきた場合の多くは実体験をもとにせず伝聞のみを頼りにコメントされていることが多い。いわゆる噂の又聞きの又聞き、みたいなやつだ。iPhoneの時にもさんざんそういうことがあった。詳しい内容はうぃる爺に直接ぶった斬ってもらうことにして、今日はこれから日本でも爆発的に普及するだろうiPadを活用する方法を二つお伝えしたい。
と、言っても大したことではなく、下記の二つのアイテムを利用するだけで断然iPadが使い易くなるという話である。(もちろん両方共うぃる爺のお墨付きです)
まず、第一にBlue Toothのキーボード。実は意外にiPadのキーボードは使いづらい。サイズが大きいから使い易いだろうというのはかなり安易な発想で、実際には1)画面が見づらい、2)間違えたキーを押しやすいという点で外付けキーボードを強くお勧めする。またこの点で、やはりスタンド式のケースがあった方が圧倒的に便利である。
画面が見づらいのは分かるが、なぜキーボードが打ちにくいのか。これはiPadのキーボードがなまじ大きい(特に横置き時)ために普段のタイピングに感覚が近いためである。人間というものは全く異なるものや新しいものに対応するほうが、普段慣れているものに中途半端に似ているものに慣れるよりも簡単である。例を挙げると、英語の発音でいうところの”TH”音がそれだ。いわゆる「代用」をしてしまいやすい、LとRの発音の区別なんかに比べるとはるかに対応しやすい。またカタカナ英語で覚えてしまっている単語の発音矯正なんかも同じく。日本語と文法的に似ている韓国語をマスターする際にも日本のカナと全く異なるハングル文字を学習する際にはいいが、上級者になると、日本語と韓国語が似ていることからくる勘違いにしょっちゅう悩まされると聞く。そして何よりこのキーボード、間違って打っても指の感触も特別な音もしないのでわかりにくい。
次なるアイテムは携帯用小型無線ルーターである。うぃる爺の強い勧めで今回の出張時に何としても手に入れたいと思っていた商品だったが、有楽町のビックカメラで発見した。筆者のイチオシ商品はこれだ。ちなみに筆者は3800円で購入。
地元の人にとってはどうか知らないが、筆者を含めた出張者は東京でWiFi(無線LAN)環境がないことに苦しめられることが多い。ホテルでも有線LANはあっても無線LANがなかったり。このルーターを使うことで有線LANを無線に切り替えることができるのでiPadのWiFi版も簡単にネットにつながるようになるわけだ。しかも、ラップトップにも大抵は無線LANがついているので、同時に二台が接続できるようになる。ネットカフェなども含めて有線LANの方は結構あちこちにあるものなので、これをつないで複数の端末をシェアしたり仲間内でネットワークを共有したりも簡単にできることになる。初期状態の設定ではWEPなども設定されていないのですぐに接続できる。電源はUSBから取ることになっているが、iPadなどに使うアップル製のUSB電源アダプタを使えば普通のアウトレットからも充電できる。
3G版を購入される方にはあまり関係ないかも知れないが、それでも海外ローミングは高い。(ソフトバンクの孫さんは海外ローミングも固定で、という発言をしているようだが)
ぜひお試しあれ!
<関連エントリー>
「iPadは大きなiPod」を斬る (うぃる爺との出会い)
うぃる爺、売れないマンガ家に喝を入れる (うぃる爺の弁明 3)
朝マックでの出来事 (うぃる爺の弁明 2)
うぃる爺、電子出版を世に問ふ (うぃる爺の弁明 初回)
9 5月 2010
誰にでも母親はいる。うぃる爺のような年になっても、母親の存在というのは忘れられないものだ。何しろ自分に生命を与えてくれた人物である。今日は母の日だった。いつものように東京の街を徘徊していたうぃる爺も今日は少しいつもとは違うことを考えていた。そう、今風に言えばシングルマザーでうぃる爺と一つ違いの弟の兄弟二人を汗水垂らしながら働き育ててくれた、強くて優しい母のことを。その手にはどこかからか摘んできた、母の愛したひまわりの花があった。
普段とは少し違ったあまり雑踏のない、閑静な住宅地を歩いていると、目の前に陸橋がでてきた。下にはJRの線路が走っている。ふと朝焼けに目を凝らすと、こんな朝の早くから一人の男が橋の下を眺めながらため息をついている。この橋は自殺の名所だったことをうぃる爺が知る由もない。
うぃる爺はそっとその男の後ろに回り込んで声を掛けた。
「何しとんねん?」
男は突然声をかけられてびっくりして、思わず橋から落ちそうになった。
「ぎゃぁ、死ぬところだった。あぁ、でも死のうとしてたんだったか」
それを聞いたうぃる爺の大きな丸い目が一際大きくなった。
「死ぬやと?」
男は自分の身上をこのホームレスみたいな身寄りの老人に話し始めた。男は売れない漫画家だった。同人時代には少し名が売れていたのだが、その時にいい気になって大手で連載をもたせてもらったが最後、同人の世界には戻れなくなっていた。案の定、待望の初連載も長く続かなかった。最近では友達の同人作家のイラストを手伝ったり、近くのコンビニでバイトしたりして何とか食いつないでいた。バイトをすればお金になるが、その分考え方も何だか狭くなるような気がしていた。創作をしようにも、面白いアイデアが湧いてこず、社会の悪い部分ばかり見えてくるようで、またちょっとした給料で食いつないでいる自分にはもう大きな夢が見られないように思い始めていた。マンガの路線を変えようにも、これまで描いてきた画風を一気に変えることもできず、またどう変えたらいいのかも分からなかった。画力にはそれなりに自信があったが、中身がなかった。コンテンツは彼の人間自身としての中身そのものである、しかし男にはそれがなかった。かといって、大手雑誌で連載をもっていた頃のプライドだけが小さくくすぶっていて、何かにつけ邪魔をするのであった。
ひとしきり男のいうことに耳を傾けていたうぃる爺が口を開いた。
「おまえ、電子出版て聞いたことあるか?」
男は言った
「えぇ、噂だけは。実は気にはなっているんですが、どうしたらいいのかまったく分からないんです。直接販売したりすることもできるそうですね、でも僕にはお金がないので端末も買えないし。キンドルとか何とかいう端末を使って読むんですよね」
爺は首を横に振った。
「電子出版の道は端末のみにあらず、や。しかし、なんでそうなんでもかんでも最初から悪い方にばかり考えて結論だしたがるんかのぉ。」
うぃる爺はどうにも解せない様子だった。
「どうや、お前も電子出版で一旗あげてみぃひんか?」
男は言った
「でも、僕はパソコンは使えても、パソコンで絵が描けないんです。それに電子出版なんて、どうやって売り込んだらいいのかさっぱり。。。」男はとにかく自信がなかった。
うぃる爺はいきなり声を上げて、男に喝を入れた
「あほか!そんなもん最初は誰もわからんのじゃ、分からんから学ぶんや、違うか?自分で考えても分からんかったら、分かってるやつに聞けばええ。それが分からんかったら探すんや。お前には向上心いうものがないんか!?」
こんなみすぼらしい老人にいきなり声を上げられて男は少し自尊心を取り戻したようだった。
「そんな、僕にも向上心はあります。ちょっと自信がないだけで。でも大体電子出版て流行るんですか?日本では難しいんじゃないですかね?それに僕は紙が好きなんです。紙の匂い、手触り、やっぱり本て独特なものだと思うんですけども。紙が無くなるなんて。。。」
うぃる爺は今度は諭すように話しかけた
「そうか。紙に愛着があるんか。それはわしも同じことや、リアルにはリアルの、バーチャルにはバーチャルのええ所がある。そやろ?別にどっちか選べ、いうとるわけやない。食えるようになったらまた紙やったらええがな、一緒にやってもええ。なんでも二者択一にしてまう必要はないんや」
うぃる爺は手に持ったひまわりの花を眺めながら言った
「紙の歴史はタラス河畔の戦いに由来しとるんやったな、お前も歴史で習ったやろ?唐がイスラム軍と戦ったっちゅうやつや。8世紀くらいやったかな。それで西洋に一気に普及したらしいな。でもな、それよりももっと前にもこんな花は咲いとったやろう?」
男は爺さんの言ってることがよく理解できなかった。
「そりゃ、もちろん、花はもっと大昔からあったでしょう」
白髪の老人は頷いて言った
「そやな、でもこの花は昔どっかにあった花とは違う。種類も変わっとるかも知れん。形有るものは全て滅びる、よぉそういうやろ」
男は頷くしかなかった。当然のことだった。そういう自分はつい先程まで寿命がくる前に自らの命を絶とうとしていたのだった。もちろん自分にそんな勇気があるのかさえ、分からなかった。所詮自分は世にゴマンといる売れない漫画家だ、それ以外の何者でもない。そういう被害者意識が彼の脳内には深く根を下ろしていたので自分でもどうしようもなかった。
うぃる爺は男の目前に花を見せて唐突に言い放った。
「どやこの花、きれいや思わんか?」 うぃる爺の意図は?続きはコチラ
8 5月 2010
今朝の東京は5月というのに朝からなんだか蒸し暑かった。まるでこれから始まる一日を象徴しているかのようだ。
朝方ゴミを漁るように、こちらからあちらへと落ち着かずに移動していたうぃる爺はマックでお気に入りのコーラを買って、窓際の席でそれをぐいと飲み干した。店内に座ると目立つのだが、それは彼の足がすごい勢いで貧乏揺すりを続けているからでもあった。見た目はホームレスさながらだったが、実は服はそんなに汚れているわけでもないので時折選択はしているようだ。風呂にもたまには入っているのだろうか。
朝7時の東京都内のファーストフード店や喫茶店にはサラリーマンやOLが多い。彼らは自分たちの生活を時間通りにきっちりコントロールすることに何よりの喜びを見出しており、デビッド・アレンのGTD(Get Things Done)と言った本を読んで毎日の作業の効率を高め生産的な日々を過ごすことを誇りとしている。そんな彼らの目にはうぃる爺はただの薄汚いオヤジである。彼の前を通り過ぎる者たちの視線にはうっすらとした冷笑や、なかにはあからさまに軽蔑の視線を投げかけるものもいる。だがうぃる爺は一向に気にしない。
やがて、窓際のスツールに腰をかけて朝の忙しい表通りを眺めながらコーラを飲んでいたうぃる爺の隣に、きっちりとしたピンクのスーツを鮮やかに着こなし、知性的なメガネをかけた女性が座った。どうやら店内が混雑してきたので、他に席がなかったようだ。
うぃる爺はしばらくその女を観察していた。女はまったく気づかない振りをしつつも、何か自分の威厳を保とうと必死になっているっぽかった。
女は手持ちのカバンの中からキンドルと呼ばれる電子端末を取り出した。それを見たうぃる爺の目は輝き始めた。どうやら女はそのキンドルで、英語の洋書などを読んでいるらしい、WSJなどという言葉が表紙にでたりすることもあるので英字新聞を読んでいるのかも知れない。
うぃる爺は女に話しかけた 「ちょっと訊きたいんやが、どやその端末は使い易いか?キンドルとかいうんやろ?」
女は怪訝そうな顔をしながらも、このホームレスような老人が今流行りのキンドルという単語を知っていたのに少し驚いた。時代に敏感と言われる彼女もつい最近アマゾンというオンライン書店で購入したばかりだと言うのに。少しためらいながらも 「えぇ、とっても使い易いわ。何より読みたいときに読みたいものが読めて、安いし。英語圏の情報を手に入れるのにはもってこいよね。私、よく本を書くの。だからたくさん資料を集めないと、しかも効率的に、ね」そう言いながらちらっと時計をみた。あと10分45秒でこの場を去り、オフィスに向かう必要がある。だが、その前に日課としている読書をしなければならない。こんな老人の相手をしている必要があるだろうか。
「そのうちみんなそういう端末を持つようになるんやろうな、携帯電話みたいに」うぃる爺は続いて尋ねた。
女性は何だか自分らしい主張をしないと気が済まないという感じになったようで、こう言った 「いえ、私はそうは思いませんわ。こういうのはインテリとかビジネスマンとか、情報に対価を支払うことで良質な情報を手に入れる必要がある者だけが持つようになればじゅうぶん。年収300万円じゃ、可処分所得が無くてこういう端末を買うことに意識がいかないんです。みんな自分の楽しみばかり追いかけて、結果的には非生産的な人生を過ごすことになるのよね、バカみたい」 女はとにかく非効率とか非生産的というのが大嫌いみたいだった。
うぃる爺は首をかしげながら言った 「なんだか、論理が飛躍しとるようやが、まぁえぇ。しかし年収300万円だろうが、なんだろうが、電子出版を楽しむ権利は誰にもあるんとちゃうか?」
女性は少しため息をついた。こういう老人に最先端の話をしてみるというのも社会貢献の一環になるかも知れない。次回の講演の際やブログのネタにでもできると考えると、あと13分くらいなら時間を費やしてもいい、いや14分半か。いずれにしても15分は使い過ぎだろう。
「いえ、日本では電子出版はマスには普及しないと思います。何故なら先をいっているアメリカでは購入しているのは知識層だったり、専門家だったり、いわゆるインテリのツールなんです。アイパッドという別の端末ならもっと若い人向けかも知れませんが、私みたいな層にはキンドルがあってるんです」女性は自分の見解を曲げようとはしなかった。 うぃる爺の反論とは!? 続きはコチラで
8 5月 2010
電子出版の可能性を信じて東京の街を徘徊する一人の老人がいた。いつの頃からか、うぃる爺と呼ばれるようになっていたが本名は誰も知らない。薄汚い服装に身をやつしながらも、その眼光は鋭かった。時には歩きながら、時には立ち止まって、あるいは床に座りながら通りゆくものをじっと観察していた。標的を探しているのだ。とにかく老人は話し始めるまでは落ち着きがなかった。噂によるとADHDとか、多動症とか呼ばれる障害を患っているらしいとのことだった。
今日も目の前を歩くものを掴まえては質問を投げかけるのであった。目の前を少し元気のなさそうな、ロマンスグレーの男が通りがかった。スーツを着ているがネクタイはしていない。手にはブリーフケース。
「仕事は何しとる?」
男は言った 「え? その。。出版社で働いています」
うぃる爺の目が輝いた
「そうか、ならちょっと訊きたいんやが、電子出版いうのは知っとるやろ?どう思う?」
男は根拠はないが間髪入れずに胸をはって言った 「日本では流行らないと思います」
間髪入れずにうぃる爺も尋ねる
「なんでや?」 うぃる爺の目は輝いていた、臨戦態勢だ。いつの間にか周りにはギャラリーができはじめている。
男は胸をはっていった 「ソニーが昔やったり、いろんなところがやりましたが、結局はどこもうまくいきませんでした」
白髪の老人は続けて尋ねる 「昔うまくいかんかったら、いつまでたってもうまくいかんのか?昔とはインターネットの環境が違うのとちゃうのか?」
男は少し詰まった 「いや、そういうわけじゃないですが、日本人にはやはり紙かと思いまして」
うぃる爺は男の自信が揺らぐのを見逃さなかった 「誰も紙が無くなるとは言うとらんやろう」
男は何かの雑誌で読んだことを思い出して言った
「日本では電子出版といえば携帯とマンガです。だからいちいち他の端末を買う人は少ないはずです。日本の携帯は世界一ですから、雑誌でもどこでもそう言っています」
うぃる爺は少しため息をつきながら話した。
「確かに今の日本では携帯とマンガが電子出版市場の大半を占めてると言われとるな。せやけどそれはそもそも、たまたま携帯電話とマンガが一般的に普及してるからかも知れんやろ。だいたい電子出版と聞いたら、条件反射みたいにキンドルやアイパッドやと端末の話をするやつの意見はたいがい間違うとる。意見、いうか自分の希望を言うとるみたいに聞こえることが多いんやが。ところでお前さんはネットをよう使うんか?」
男はぎくりとした。普段はメールを使うかニュースを見るか、アダルトサイトを見るくらいしかネットに触れることはない。ウェブを取り巻くカタカナの言葉もよく分からないし、巷で流行し始めているソーシャルメディアというものに関してはまったく何の意味かも分かっていなかったのだ。
「いや、私はアナログ人間なので。エディターですから週末は子供になることにしてます」
「わけのわからんことを言うな!そんな時代はとうに終わっとる。今はメール言うたら電子メールのことを言う時代やぞ。わしはな、何も電子出版の専門家をきどるつもりはない、しかし、世の中がこれだけ変わってきとる時に先を読むのはそんなに簡単なことやない、ということは分かっとるつもりや。しかし、お前はそれにすら気づいとらん。自分が出版社にいるからいうて、電子出版も自分のテリトリーや、そう思とるやろ」
男には返す言葉がなかった。
さらにうぃる爺の口撃は続く。
「出版業界には何年おるんや?長いんか?」
男は俯き加減で答えた 「大学出てからずっと、もうすぐ30年になります」 男は50代半ばだった。
それを聞いて、うぃる爺は急に優しい口調で話し始めた。
「そうか、長いこと出版業界の屋台骨をしょってきたんやな。 時代の流れが変わるのを見るのはさぞかし辛いやろう」
男は半分泣きべそになって言った 「そうなんです。。。音楽や映画が電子化した時には興味深々であれこれ騒ぎ立てたんですが、いざ自分の仕事に影響がでてくると。。。息子がもうすぐ大学に入るので今辞める訳にはいかないのです」
「リストラの空気が漂うてる、そうやな?今年はいっぱい出版社が潰れるらしい。雑誌もあちこち廃刊になっとるやろ」 うぃる爺は頷きながら言った。
「今からでも遅うない、電子出版の現状についてもう少し偏見をとっぱらって勉強してみたらどうや、おまえさん編集者やろ、違うか?」
もう顔を涙でぐしょぐしょにしている高岡編集長は何度も頷いていた。最近ヒット作がでておらず、同僚が次々に解雇されたり部署が閉鎖されたりしているので気が気ではなかったのだ。長年一緒にやってきた山田も、ついに5月で依願退職に踏み切った。これが一番こたえた。
うぃる爺はどこから取り出したのか、一冊の本を男に手渡しながらこう言った 「この本にはその昔電子出版の可能性を信じて、失敗を続けて周りから罵倒されながらも、日本の作家や編集者のためにメッセージを叫び続けた男の魂がこもっとる。最初はようわからんかも知れんが、何度も何度も繰り返して読んでみぃ。最初わからんことも、そのうちようわかるようになってくるはずや。自分が分からんからいうて、やみくもに否定するのは「バカの壁」にぶつかっとるんやからな。聞いたことあるやろ?」
男はその本を手にとった。そこには「電子ブック開国論」という署名があった。中を開けると手書きで「活字と日本をこよなく愛する者として」という銘とともによくわからない英字の書体があった。日付の横には「意力」と書いてあった。
「ありがとうございます。読んでみます!」 とお礼を言って顔を上げた時には既に老人の姿はなかった。。。
(注: この物語は完全なフィクションです。実在の人物でモデルに相当する人がいる、場合もあるかも知れませんが内容とは一切関係がありません)
第二話へ続く
29 4月 2010
今朝アップルの公式HP上で発表されたスティーブ・ジョブズのアドビ社のFlash技術に対する声明文 “Thoughts on Flash“が大きな反響を呼んでいる。これに答える形でウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)がアドビのCEOである Shantanu Narayen氏に対して独占インタビューを行った。これまでいわば「冷戦」状態だった両社だが、いよいよ公的な見解をお互いにぶつける形となった。共にアメリカのみならず、世界的に有力な大企業なので、メディア的には格好の題材である。
ジョブズの声明文は(内容はともかく)、ちょっと創世記をもじったような非常に美しい文体で書かれていると感じた。そして、その見解は6つのポイントから成っている。全部訳そうと思ったが、締め切りを控えた仕事をいくつか抱えている関係で取り急ぎポイントだけを整理したい。それに対するアドビ側の見解も併記してみた。(日本語訳にはなぜだかこてこて関西弁を採用)
First, there’s “Open”.
Adobe’s Flash products are 100% proprietary. They are only available from Adobe, and Adobe has sole authority as to their future enhancement, pricing, etc. While Adobe’s Flash products are widely available, this does not mean they are open, since they are controlled entirely by Adobe and available only from Adobe. By almost any definition, Flash is a closed system.
「オープン性」について
アドビのフラッシュ製品は自分とこのもんだけやっちゅーこっちゃ。将来性から値段から何でもアドビだけが決めよるねん。誰でも使えるからってオープンとは限らんちゅーこっちゃやな。要するにFlashはクローズドなシステムやということ。
Second, there’s the “full web”.
Adobe has repeatedly said that Apple mobile devices cannot access “the full web” because 75% of video on the web is in Flash. What they don’t say is that almost all this video is also available in a more modern format, H.264, and viewable on iPhones, iPods and iPads. YouTube, with an estimated 40% of the web’s video, shines in an app bundled on all Apple mobile devices, with the iPad offering perhaps the best YouTube discovery and viewing experience ever. Add to this video from Vimeo, Netflix, Facebook, ABC, CBS, CNN, MSNBC, Fox News, ESPN, NPR, Time, The New York Times, The Wall Street Journal, Sports Illustrated, People, National Geographic, and many, many others. iPhone, iPod and iPad users aren’t missing much video.
「ウェブはフラッシュ無しでも大丈夫」 続きを読む